新富町のしごと

カジュアルな普段着に長靴を合わせた格好で、颯爽と畑に入っていく。肩の力の抜けたスタイルがどこまでも潔い。

この若き就農者が、2017年9月、福岡県から新富町に移住した石川美里さんだ。

社会課題の解決のために起業

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農業人口の高齢化や担い手不足に伴い、全国各地で耕作放棄地が増加している。

石川さんはこれらの社会課題の解決に向けて、新富町で新たなビジネスをスタート。高齢者を雇用し、耕作放棄地で有機野菜を生産・販売することで地域を活性化しようと、「みらい畑株式会社」を設立した。

農業人口が減少する中、若者の新規就農が追い付いていない現状があります。ならば発想を変えて、若者に代わるプレイヤーとして定年退職後の高齢者の方々を雇用できないかと考えました。

高齢者が経済的な余裕を持って第二の人生を楽しめる社会をつくれたら、若い人たちも将来にもっと希望を持てるんじゃないかと思うんです。

農業の担い手として期待されている若者ではなく、定年退職後の高齢者を雇用することで生産者を確保するという新たな発想で、低価格な有機野菜の生産・販売をめざす。

よそ者が「起業×新規就農」

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昨年6月、土屋前町長にお会いして、このプランの話をしたときに、「ぜひ新富町でやってください」と言っていただきました。

よそ者が農業の世界に入るのは、ハードルが高いと思っていたのですが、新富町はすごくオープンかつウエルカムで、「ここでやりたい」という気持ちがすぐに固まりました。

「農業の現場を知らずして経営はできない」と、移住後は起業とともに新規就農も果たし、町の農家の協力を得ながら農業を実践している。

新富町は人がすごくあたたかい。

農業の指導をしていただいている農家の出口喜重郎さんは、お家でご飯を食べさせてくれたり、おかずを持たせてくれたりとすごく面倒をみてくださり、家族であたたかく迎え入れてくれます。町の方々もよく声をかけてくれますよ。

よそ者と地域をつなぐ存在

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宮崎県新富町が旧観光協会を法人化して設立した地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)」が、石川さんと役場、地元のベテラン農家の間を取り持ち、スムーズに事業を開始するためのコーディネートを担当。

石川さんの挑戦を町が応援できる体制を整えた。

こゆ財団はよそ者と地域をつなぎ、事業のスピードをぐんと後押ししてくれる頼もしい存在です。

一人で立ち上げたので不安もありましたが、常に大きな支えになってくださいました。こゆ財団がなければ、新富町での起業はできなかったと思います。

「みらい畑株式会社」のオフィス機能は、こゆ財団のソーシャル・デザイン・ラボ内にあり、石川さんは毎日畑とラボを行き来している。

ラボに来れば、こゆ財団の方々がいて、ちょうどいい距離感でいろんな話や相談ができます。

起業後も、町の人たちにサポートいただきながら、ビジネスを前に進めることができ、「一人だけど一人じゃない」と思えることはとても心強いです。

社会課題の解決に人生を賭ける

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今後は農業のノウハウを習得しながら、高齢者が腰を曲げずに農作業ができる補助器具の開発など、身体に負担をかけない農業の実現に向けて本格的に取り組んでいく。

まずは新富町できちんと利益が出るビジネスモデルを確立し、ゆくゆくは全国に広げることが目標だ。

社会課題の解決に自分の人生を賭けてみたい。それが私の生きるモチベーションです。

石川さんには、そう笑顔で言い切ってしまう底知れぬ強さがある。

社会の役に立つために、人生を賭けてできること。その一点を曇りのない目で見つめ、つくり出した“生涯の仕事”。その大きな一歩を、この町で踏み出した。

転載元:こゆ財団 ブランドブック
原文執筆:中里 篤美
写真:Waki Hamatsu
編集:MACHI LOG 編集部